ベイルートの地価と家賃

午後4時半、知人との仕事の打ち合わせに、ハムラ通りのはじめにあるカフェに向かう。この時刻にしては車の量が少ないと思いきや、ハムラ通りで借家人の小規模デモがあったのだ。先週議会で可決された賃貸住宅に関する法律は、主にベイルートの20万軒のアパルトマンに関したもので、大家が20年前の微々たる家賃を改定したり、借家人に引き払ってもらう権利を認めたものだ。

昨今の相場では年間1万ドルはくだらないアパルトマンに、年間100ドル程度を払い続けてきた借家人たち。その多くは経済的に困っているわけでもない。これまでただ同然だった賃貸料がおかしいとは分かっていながら、やはりこの新しい法律面白くないのだ。

1970年代内戦以前、ベイルートは中東のパリといわれた。金融、ビジネス、観光、報道・出版、娯楽、いずれの点でもアラブ地域の華的存在だった。その頃から40年、アラブ地域はいろいろ変わり、ベイルートの位置づけも変わった。

要すれば、以前のような「唯一」の存在でなく、カイロ、ドバイ、アンマン等「いくつかのうちひとつの」、そして「名ばかりで遅れているが」、しかし相変わらず自由で、華があり、郷愁的かつ超近代的な街なのだ。というわけで、レバノンに住むレバノン人だけでなく、世界に散らばるレバノン人(国内人口の4倍といわれる)、湾岸アラブ諸国、シリアやイラクの金持ちまで、ベイルートにアパルトマンをひとつは買って置きたい客は、この国がいかなる政情不安に陥ろうが、後を絶たない。

安定すれば、さらにこの地域に和平が成立すれば、不動産はさらに値上がりするはずだ。2006年の対イスラエル戦争、3年来のシリア危機で、景気は全般にふるわないものの、地価に家賃は右上がり。このシリア危機の裏には、レバノン・キプロス海に埋蔵されている石油とガスの利権をめぐる駆け引きがあるともいわれている。シリアがおちつけば、さらに、ベイルートの地価はまたあがるだろう。

 

 

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